Fred Kaps (フレッド・カップス) (1926-1980年)
オランダの天才プロマジシャン。FISMという、3年おきにヨーロッパを中心に開かれる伝統あるコンベンションがあります。この大会でフレッド・カップスは1950年,1955年,1961年と3度もグランプリを受賞するという空前絶後の快挙を成し遂げています。1976年にPCAM東京大会のため来日しました。そのとき見たステージ、クロースアップ、レクチャーは今でも鮮烈な印象として残っています。
FISMでの3回のグランプリが示しているように、技術的にも何をさせてもうまいのですが、そのようなことを超越した人物でした。まさに20世紀を代表するマジシャンです。 演じているマジックには完全なオリジナルと呼べるものはそれほど多くありません。しかし抜群のマジックセンスで、クラシックに新たな息吹を吹き込み、見違えるようなトリックに仕立てています。
彼のマジックにおける演出上の基本的コンセプトは、マジシャンが観客より優位な立場にいるというより、起こった不思議な現象を観客と同レベル、つまり、不思議な現象を一緒に驚くという見せ方を好んで用いていました。このような見せ方をされると、観客は「現象」を押しつけられているというより、マジシャンと一緒になって笑ったり驚いたり出来るので、リラックスしてマジックを楽しむことが出来ます。
背も高く、ハンサムで威風堂々としたマジシャンです。しかしステージではいたずらっ子のような、またははにかんだような表情をよく見せます。これがまたとても魅力的です。
活躍の場がヨーロッパの社交界やプライベートのパーティが中心の仕事場でしたので、客層も大変よかったのでしょう。
「箴言集」でもカップスの言葉について触れておきましたので参照してください。
彼のレクチャーノートにも、含蓄のある言葉が色々とありますので、一部、ご紹介します。
1.「クラシックと言われているマジックは、原理は大変シンプルであるが、観客に与える効果は最高である」
2.「効果が第一、手段は第二」
2の例として、火のついたタバコを、ハンカチの真ん中から貫通させるというマジックを例にあげています。私もPCAM東京大会のとき見せてもらいましたが、火のついたタバコが、ハンカチの中央をきれいに通り抜けたのです。実際は、ハンカチの中央に穴が空いているだけです。観客は、まさか穴の空いたハンカチをマジシャンが使っているとは思わないので、勝手に驚いてくれるのです。勿論、全部がこの調子ではダメですが、テクニックを使ったものの中に、このようなふざけたネタをはさんでも観客は気づきません。勝手な思いこみを利用したマジックです。
3.「パーティなどでマジックを見せるのが主な仕事であるマジシャンにとって最も強力な力になるのは、演じるトリックの内容よりも、一人の人間としての振る舞いである。」
つまりマジシャンとして成功するには、トリックなどより一個の人間として、魅力あるかどうかにかかっていると言っています。確かに長くプロとしてやっていけるかどうかは、その部分が最大の秘訣だと思います。決してマジックの上手い下手ではありません。マジックをやらなくても十分魅力的な人であれば、マジックは何を見せても喜んでもらえます。これはライプチヒも同じことを言っています。
確かにこのようなこと、つまり一人の人間として魅力ある人物になるということですが、このようなことは一朝一夕にはできません。しかしどうすれば好印象を持ってもらえるのか、マジックのネタを考える前に、こちらのほうにもう少し力を入れたほうがよいのにと思えるマジシャンが大勢います。感じが悪いと思われたら、あとは何をやっても観客は拒絶します。売れるのはネタではなく、マジシャン自身のキャラクターなのです。これはゴッシュマンの言葉にもありました。
1976年に私がフレッド・カップスとはじめて会ったときも、気さくにロビーなどでマジックを見せてくれました。また夜中に誘い出し、帝国ホテルから出て、銀座の焼き肉屋でマジック談義に花を咲かせているときも色々と見せてくれました。中でも一番驚いたのは、今まで飲んでいたビールのコップを一瞬にして消してしまったときです。 これは、マニアであれば誰でも知っている「トピット」を使ったのですが、夜中に飲み屋でリラックスしているときでさえ、ジャケットにそんなネタをセットし、いつでも臨戦態勢でいるのです。さすがに一流と言われる芸人はサービス精神旺盛で、心がけが違うものだと改めて敬服しました。
引用:マジェイアの魔法都市案内
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