昨日は失礼いたしました……じいやとしたことが、不覚にも。
お嬢様が久々に学校へ出かけている間に謝意を表明しておきましょう。今日、お嬢様は久々に学校へ出かけられました。確か、先週の木曜日以来、でしたか。金曜日は自主休講、土曜日は公式休講、日月が休日で、後期のお嬢様は火曜水曜に授業がないようです。そのわりに、昨夜遅くまで課題と取り組んでいたところがお嬢様のお嬢様たる所以でしょうか。
しかし、お嬢様がいないからといってじいやの仕事がなくなるわけではありません。じいやは屋敷の差配を旦那様に任されている身、万が一の粗相も許されません。
とはいえ、たまには休息もとります。作業効率が悪くなりますからね。二時間に一度は休むことにしております。普段でしたらその間に音楽でも聴くところですが、今日はソファに身を横たえながら読書をしておりました。今日のような暖かい日和に読書、というのもなかなか乙なもので。昨夜以来の疲れもありまして、短く眠ってしまったようでした。
あれはいつのことでしたか。じいやがまだこの屋敷で給仕させていただく前のことですから、もう二十年も前のことになりましょう。十年一昔、とはいったもので、ならばこれはふた昔。
わたくしは川べりを歩いておりました。当時、お勤めさせていただいていたお屋敷が川沿いにあったのです。娘も一緒でした。買い物の帰りでした。わたくしどもは何も云わなかったのですが、不意に娘が川べりに無花果がなっているのに気づいたのです。
もうこの時期の無花果ならば、余程の無味でもない限り虫やカラスに食べられてしまっていることでしょう。わたくしは無花果に手を伸ばす娘にやめるよう云いました。ですが、娘は笑ってとりあえず、器用にひとつをもぎ取ると、それをわたくしに渡しました。
齧った無花果は私の予想に違わず、娘は残念だといいました。
娘の結婚式の前日のことです。
どうしてそんなことを夢見たのかはわかりませんが、目を覚ますともうお嬢様の帰ってくる時間。いささか眠りすぎてしまったようです。
じいやは服を整えると、これから階下へ向かうこといたしましょう。
では。




