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銭湯について書く

田中です。田中は二人います。この団体に。

 

銭湯について何となく書いてみたいと思います。ホント特に理由もなく書きます。なるべく当たり障りのない文章で。無味乾燥な言葉遣いで。人畜無害な僕が。

 

銭湯とはどうして、こうも人の心を揺さぶるのだろう。もちろん、そこには「お風呂」があるだけだ。それも、ただ大きいだけのお風呂。中ではもうもうと湯気が立ちこめて、時々お湯を使う音が聞こえて、脱衣所にはおじいちゃんしかいない、そんなお風呂。

 

そんな大きな湯船に似合うものはこれしかないと言うかのように、決まって湯船の背後には富士山が描かれている。それも少し雪化粧をしている、色っぽい富士山。あの絵は専門の職人がいて、都内にはもう数えるほどしかその職人がいないそうだ。銭湯の全盛期には、かなりの数の絵師が東京で活躍していたという。僕はそういった職業を志した時の自分を想像してみる。跡取りのいない、けれど卓越した技術を持つ孤高の職人に弟子入りし、毎日修行。始めは見るだけ、筆を持つのは「洗え」と言われた時だけである。跡取りである自分がいなくなればもはや次世代の銭湯の富士を描ける者がいなくなるであろう状況において、それでも職人は僕につらく当たる。これでもかというぐらいにいじめ抜く。そして半年のあいだ、僕は耐え抜く。僕にはわかっている。職人は、僕の意志の強さを見ているのだと。こんなことで折れるぐらいの決心で銭湯専門の絵師を目指していたのであれば、これから先進まなくてはならない茨の道を一歩も進むことができないであろう。その世界で何十年も生きてきた職人には、それが痛いほどよくわかっているのだ。僕は耐える。ここで折れてしまったら、応援してくれている両親、毎日笑顔で送り出してくれる彼女、何より絵師になるために会社を辞めた自分に、申し訳が立たない。絵師に何としてもなってやる、その思いだけで毎日を生き抜き、さらにもう半年僕は耐える。そして弟子入りしてちょうど一年が経った頃、ついに絵師が口を開く。「大輔、描いてみるか。」

 

僕はその後泣きながら富士山なのか磐梯山なのかわからないものを描くことになるのだが、そして彼女なんていないのだが、全然話が逸れてしまった。この記事の要点は、銭湯がなぜ人の心を強く惹き付けるのか、であった。

 

夕方の銭湯に行くと、銭湯がどれだけコミュニケーションの場として機能しているかがよくわかると思う。脱衣所では、毎日来ているであろう老人同士が今日あった他愛のないことを話し合っている。目下のところ、僕はそういった方々を見かけると「古老」というあだ名を付け、「古老さん、新入りの僕ですが、お邪魔します」と心の中で告げてから、湯船に向かうことにしている。そこには一朝一夕で積み上げられたようなものではない空気が漂っていて、何も知らずその場に入り込んだ者は思わず敬意を表してしまう、そういった空間が出来上がっているのだ。それは何も客同士だけのものではない。番台に座るご主人に常連が銭湯の回数券を渡す時の、何気ないやりとり。それだって十分に濃密な人間関係がそこに横たわっていることを伺わせる。その土地に根付き、その土地の客を受け入れている銭湯という場は、古き良きと言ってしまってはあまりに悲しいが、そういった近所づきあいの場でもあった。言ってしまえば、銭湯はその地域の縮図なのだ。文字通りのそういう裸の付き合いを通して、古来より人々は地域に溶け込み、関係を構築してきた。今日、そういった環境や場所が減少し、人々と地域というものの関係もまた変わってきている。私たちはいま、銭湯に学ぶべきところがあるのではないか。夕暮れにひっそりと佇む煙突を見てつい感傷に浸ってしまうのは、私たちが無くしてしまったものに対する憧憬の表れなのではないだろうか。

 

 

といったところで、僕は上記のようなことはまったく考えないで生活をしているわけなんですが、ここらへんで筆を置きたいと思います。「筆を置きたい」って一度言ってみたかったんです。ありがとうございます。

 

次回、「ウォシュレットの世界に迫る」に続きます。それではお休みなさい。

 

 

明日から整理券配布だというのに、大丈夫なんですかね。

 

 

08/10/23 04:50:44
【第三会議室】公開収録
団体名

ワセダイサン

ジャンル エンターテイメント
日時・場所 2日目 15号館203
企画概要 SPACE SHOWER TV 「BLACK FILE」内で人気のあのコーナーの公開収録!宇多丸とKダブシャインの時事ネタトークをフルで、生で見るチャンスです。
団体概要 第三会議室を早稲田に招くサークルです。     スタッフも募集中です。
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